ンタに薬を盛った嫌疑があります。同夜雨が降り出してから屋外にいたことも争われぬ事実です。兇器としては太いステッキを持っていました。そして最後に、死人が彼の襟飾《ネクタイ》を掴んでいました。これだけ材料があれば、十分陪審員たちを承伏させることが出来るに違いありません」
ホームズは首を傾げて、
「上手な弁護士にかかったらそれくらいのことは難なく論破されてしまうでしょうね。シムソンはなぜ白銀を厩舎の外へつれ出さなければならなかったんですか? 傷つけて競馬に出られなくしたければ厩舎の中でも出来ることじゃないですか? 捕えられた時、厩舎の合鍵を持っていましたか? 阿片末を売り渡したのはどこの薬種商です? とりわけ土地不案内なシムソンが、馬のような大きなものを、しかもこうした有名な馬をどこへかくせるというんです? 上手な弁護士ならこれ等の点を捕えて、巧みに論破してしまうでしょう。シムソンは女中に頼んで厩舎に届けさせようとした紙片《かみきれ》を何んだといってるんですか?」
「十ポンドの紙幣だったといっています。そういえばポケットの中へ十ポンドの紙幣を一枚持っていました。しかし、あなたの仰しゃった反
前へ
次へ
全53ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福沢 諭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング