り、明年に至らば、また増して三万となり、他の府県もまた、この法にならって学校を建てざる者なかるべし。
しからばすなわち、爾後《じご》日本国内において、事物の順序を弁じ、一身の徳を脩め、家族の間を睦じくせしむる者も、この子女ならん。世の風俗を美にして、政府の法を行われ易からしむる者も、この子女ならん。工を勤め商を勧め、世間一般の富をいたすものも、この子女ならん。平民の知徳を開き、これをして公に民事を議するの権を得せしむる者も、この子女ならん。自から労して自から食らい、一身一家の独立をはかり、ついに一国を独立せしむる者も、この子女ならん。広く外国と交《まじわり》を結び、約束に信を失わず、貿易に利を失わしめざる者も、この子女ならん。概してこれをいえば、文明開化の名を実にし、わが日本国をして九鼎大呂《きゅうていたいりょ》より重からしめんには、この子女に依頼せずして他に求むべきの道あらざるなり。
民間に学校を設けて人民を教育せんとするは、余輩、積年の宿志なりしに、今、京都に来り、はじめてその実際を見るを得たるは、その悦《よろこび》、あたかも故郷に帰りて知己朋友に逢うが如し。おおよそ世間の人、
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