だ現われずして、まず廃仏の議論を生じ、その成跡《せいせき》は神仏同居を禁じ、僧侶の生活を苦しめ、信者の心を傷ましめ、全国神社・仏閣の勝景美観を破壊して、今日の殺風景をいたしたるのみ。そもそも神道なるものは、我が輩の知らざるところなれども、一種の学問ならんのみ。
いやしくも学問とあれば、おのずから主義の見るべきものあるは無論なるがゆえに、その学問の主義をもって他の学流と競争するも可なり、相互に敵視するも可なり。政治に密着せざる間は、ただその学流自然の力に任して、おのずから強弱の帰するところあるべきはずなるに、王政維新の際において、大いに政府に近づき、その政権に依頼したるがために、とみに活動をたくましゅうし、その学問に不相当なる大変動を生じて、日本国の全面に波及したるは、これまた学問と政治と附着したるの弊害というべし。
右等は維新前後の大事変なれども、大変の時勢はしばらくさしおき、平時といえども、世の政談の熱度、次第に増進すれば、その気はおのずから学校に波及して、校中多少の熱を催おすべきは、自然の勢においてまぬかれ難きことならん。全国の学校を行政官に支配し、また行政官の手をもってその教
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