明に促《うなが》されたる人心の変動なれば、かの戦争の変動はすでに七年前にやみてその跡なしといえども、人心の変動は今なお依然たり。およそ物動かざればこれを導くべからず。学問の道を首唱して天下の人心を導き、推してこれを高尚の域に進ましむるには、とくに今の時をもって好機会とし、この機会に逢う者はすなわち今の学者なれば、学者世のために勉強せざるべからず。  以下十編につづく。
[#改段]

 十編



   前編のつづき、中津の旧友に贈る

 前編に学問の旨《むね》を二様に分けてこれを論じ、その議論を概すれば、「人たるものはただ一身一家の衣食を給し、もってみずから満足すべからず、人の天性にはなおこれよりも高き約束あるものなれば、人間交際の仲間に入り、その仲間たる身分をもって世のために勉《つと》むるところなかるべからず」との趣意を述べたるなり。
 学問するには、その志を高遠にせざるべからず。飯を炊《た》き、風呂の火を焚《た》くも学問なり。天下の事を論ずるもまた学問なり。されども一家の世帯は易《やす》くして、天下の経済は難《かた》し。およそ世の事物、これを得るに易きものは貴からず。物の貴き所以《
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