く、黙して誉《ほ》められて笑いて損をしたるがごとく、終歳胸痛を患《うれ》うるがごとく、生涯父母の喪にいるがごとくなるもまたはなはだ厭うべし。顔色容貌の活発愉快なるは人の徳義の一ヵ条にして、人間交際においてもっとも大切なるものなり。人の顔色はなお家の門戸のごとし、広く人に交わりて客来を自由にせんには、まず門戸を開きて入口を洒掃《さいそう》し、とにかくに寄りつきを好くするこそ緊要なれ。
しかるに今、人に交わらんとして顔色を和するに意を用いざるのみならず、かえって偽君子を学んで、ことさらに渋き風を示すは、戸の入口に骸骨をぶら下げて、門の前に棺桶を安置するがごとし。誰かこれに近づく者あらんや。世界中にフランスを文明の源と言い、智識分布の中心と称するも、その由縁を尋ぬれば、国民の挙動常に活発気軽にして言語容貌ともに親しむべく近づくべきの気風あるをもって原因の一ヵ条となせり。
人あるいは言わん、「言語・容貌は人々の天性に存するものなれば勉めてこれを如何《いかん》ともすべからず、これを論ずるも詰まるところは無益に属するのみ」と。この言あるいは是《ぜ》なるがごとくなれども、人智発育の理を考えなば、
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