つてここに心づかず、働きの位は一におり、心事の位は十にとどまり、一にいて十を望み、十にいて百を求め、これを求めて得ずしていたずらに憂いを買う者と言うべし。これを譬《たと》えば石の地蔵に飛脚の魂を入れたるがごとく、中風の患者に神経の穎敏《えいびん》を増したるがごとし。その不平不如意は推《お》して知るべきなり。
 また心事高尚にして働きに乏しき者は、人に厭《いと》われて孤立することあり。己が働きと他人の働きとを比較すればもとより及ぶべきにあらざれども、己が心事をもって他の働きを見れば、これに満足すべからずして、おのずから私《ひそか》に軽蔑の念なきを得ず。みだりに人を軽蔑する者は、必ずまた人の軽蔑を免るべからず。互いに相不平をいだき、互いに相蔑視して、ついには変人奇物の嘲りを取り、世間に歯《よわい》すべからざるに至るものなり。今日世の有様を見るにあるいは傲慢|不遜《ふそん》にして人に厭わるる者あり、あるいは人に勝つことを欲して人に厭わるる者あり、あるいは人に多を求めて人に厭わるる者あり、あるいは人を誹謗《ひぼう》して人に厭わるる者あり。いずれもみな人に対して比較するところを失い、己が高尚なる
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