取るに足るのみ。書生の激論も時には面白からざるにあらずといえども、親戚|児女子《じじょし》団座の席にこれを聞けば発狂人と言わざるを得ず。この場所柄と時節柄とを弁別して規則あらしむるはすなわち心事の明らかなるものなり。人の働きのみ活発にして明智なきは、蒸気に機関なきがごとく、船に揖《かじ》なきがごとし。ただに益をなさざるのみならずかえって害を致すこと多し。
第四 前の条々は人に働きありて心事の不行届きなる弊害なれども、今これに反し、心事のみ高尚遠大にして事実の働きなきも、またはなはだ不都合なるものなり。心事高大にして働きに乏しき者は、常に不平をいだかざるを得ず。世間の有様を通覧して仕事を求むるに当たり、己《おの》が手に叶うことは悉皆《しっかい》己が心事より以下のことなればこれに従事するを好まず、さりとて己が心事を逞しゅうせんとするには実の働きに乏しくしてことに当たるべからず、ここにおいてかその罪を己れに責めずして他を咎め、あるいは「時に遇《あ》わず」と言い、あるいは「天命至らず」と言い、あたかも天地の間になすべき仕事なきもののごとくに思い込み、ただ退きて私《ひそか》に煩悶するのみ。口に
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