この類を求めて例を挙ぐればいちいち計《かぞ》うるに遑《いとま》あらず。この「世話」の字義は経済論のもっとも大切なる箇条なれば、人間の渡世において、その職業の異同事柄の軽重にかかわらず、常にこれに注意せざるべからず。あるいはこの議論はまったく算盤《そろばん》ずくにて薄情なるに似たれども、薄くすべきところを無理に厚くせんとし、あるいはその実の薄きを顧みずしてその名を厚くせんとし、かえって人間の至情を害して世の交際を苦々《にがにが》しくするがごときは、名を買わんとして実を失うものと言うべし。
 右のごとく議論は立てたれども、世人の誤解を恐れて念のためここに数言を付せん。修身道徳の教えにおいてはあるいは経済の法と相|戻《もと》るがごときものあり。けだし一身の私徳は悉皆《しっかい》天下の経済にさし響くものにあらず、見ず知らずの乞食に銭を投与し、あるいは貧人の憐れむべき者を見れば、その人の来歴をも問わずして多少の財物を給することあり。そのこれを投与しこれを給するはすなわち保護の世話なれども、この保護は指図とともに行なわるるものにあらず、考えの領分を窮屈にしてただ経済上の公をもってこれを論ずれば
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