だその人を見ず。かくのごとく、期限の長き未来を言うときにはたいそうなることを企つるようなれども、その期限ようやく近くして今月今日と迫るに従いて、明らかにその企ての次第を述ぶること能わざるは、畢竟ことを企つるに当たりて時日の長短を勘定に入れざるより生ずる不都合なり。
右所論のごとく、人生の有様は徳義のことにつきても思いのほかに悪事をなし、智恵のことにつきても思いのほかに愚を働き、思いのほかに事業を遂げざるものなり。この不都合を防ぐの方便はさまざまなれども、今ここに人のあまり心づかざる一ヵ条あり。その箇条とはなんぞや。事業の成否得失につき、ときどき自分の胸中に差引きの勘定を立つることなり。商売にて言えば棚卸しの総勘定のごときものこれなり。
およそ商売において、最初より損亡《そんもう》を企つる者あるべからず。まず自分の才力と元金とを顧み、世間の景気を察して事を始め、千状万態の変に応じて、あるいは当たりあるいは外《はず》れ、この仕入れに損を蒙《こうむ》りかの売捌《うりさば》きに益を取り、一年または一ヵ月の終わりに総勘定をなすときは、あるいは見込みのとおりに行なわれたることもあり、あるいは大
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