に当たり事に接して、ふと悪念を生じ、わが身みずから悪と知りながら、いろいろに身勝手なる説をつけて、しいてみずから慰むる者あり。またあるいは物事に当たりて行なうときはけっしてこれを悪事と思わず、毫《ごう》も心に恥ずるところなきのみならず、一心一向に善《よ》きことと信じて、他人の異見などあれば、かえってこれを怒り、これを怨《うら》むほどにありしことにても、年月を経て後に考うれば、大いにわが不行届きにて心に恥じ入ることあり。
 また人の性に智愚強弱の別ありといえども、みずから禽獣《きんじゅう》の智恵にも叶《かな》わぬと思う者はあるべからず。世の中にあるさまざまの仕事を見分けて、この事なれば自分の手にも叶うことと思い、自分相応にこれを引き受くることなれども、その事を行なうの間に、思いのほかに失策多くして最初の目的を誤り、世間にも笑われ、自分にも後悔すること多し。世に功業を企てて誤る者を傍観すれば、実に捧腹《ほうふく》にも堪えざるほどの愚を働きたるように見ゆれども、そのこれを企てたる人は必ずしもさまで愚なるにあらず、よくその情実を尋ぬれば、また尤《もっと》もなる次第あるものなり。畢竟世の事変は活
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