にこの説は、あまねく徒食の輩に告ぐるものにて、学者に諭《さと》すべき言にあらず。
 しかるに聞く、近日中律の旧友、学問につく者のうち、まれには学業いまだ半ばならずして早くすでに生計の道を求むる人ありと。生計もとより軽んずべからず。あるいはその人の才に長短もあることなれば、後来の方向を定むるはまことに可なりといえども、もしこの風を互いに相倣《あいなら》い、ただ生計をこれ争うの勢いに至らば、俊英の少年はその実を未熟に残《そこな》うの恐れなきにあらず。本人のためにも悲しむべし、天下のためにも惜しむべし。かつ生計難しといえども、よく一家の世帯を計れば、早く一時に銭を取りこれを費やして小安を買わんより、力を労して倹約を守り大成の時を待つに若《し》かず。学問に入らば大いに学問すべし。農たらば大農となれ、商たらば大商となれ。学者小安に安んずるなかれ。粗衣粗食、寒暑を憚《はばか》らず、米も搗《つ》くべし、薪も割るべし。学問は米を搗きながらもできるものなり。人間の食物は西洋料理に限らず、麦飯を食らい味噌汁を啜《すす》り、もって文明の事を学ぶべきなり。
[#改段]

 十一編



   名分をもって偽君
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