景を見ない様に私の目をつかまへて牢屋に入れたいが、そんな牢屋はないだらうかといふのである。目を牢獄につなぐといふ様な思ひ切つた新らしい表現法は当時から晶子さんの専売で誰も真似さへ出来なかつた。
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思ひ出に非ずあらゆる来《こ》し方の中より心痛まぬを採る
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故人と共に過した四十年の人生は短いものでもなく随分忍苦に満ちた一生ではあつたが、生甲斐のあるやうに思つた年月も少くはない。私は既に年老い心も弱くなつたので、人の様に様々の思ひ出に耽る気力はない。今私の為し得ることは、一切の過去の出来事の中から老の心を痛ませない様なものだけを取り出して見ることである。それが私の思ひ出である。何といふあはれの深い歌であらうか。
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今日もなほうら若草の牧を恋ひ駒は野心忘れかねつも
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こんなに好い事が重つてゐる、それだのに今日もなほ、野放しだつた頃、親の家に居て仕度い三昧に暮してゐた頃のことが忘られず、不満に似たやうな心も起きる、困つたことねと先づこんな風な心持ではないかと思はれるが、もと象徴詩の解釈だから
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