中する。それが愚かしいことであらうがなからうがと云ふので、之は晶子さんの初めからの信条であり又信仰でもあつた。それ故 やごとなき君王の妻《め》に等しきは我がごと一人思はるゝこと といふ歌もあり又 天地に一人を恋ふと云ふよりも宜しき言葉我は知らなく などいふのもある。
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伊香保山雨に千明《ちぎら》の傘さして行けども時の帰るものかは
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十一年の春伊香保での作。丁度雨が降り出したので温泉宿|千明《ちぎら》の番傘をさして町へ出掛け物聞橋の辺まで歩いて見た。所は同じでもしかし時は違ふ、過ぎ去つた時は決して帰ることは無いのである。この折榛名湖の氷に孔をあけ糸を垂れて若鷺を釣る珍しい遊びを試みた人があつた。それは 氷よりたまたま大魚釣られたり榛名の山の頂の春 と歌はれ、又 我が背子を納めし墓の石に似てあまたは踏まず湖水の氷 といふ作も残されてゐる。
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思はれぬ人のすさびは夜の二時に黒髪梳きぬ山ほととぎす
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少し凄い歌で人を詛ふ[#「詛ふ」は底本では「咀ふ」]やうな気持が動いてゐる。山の中の光景で、
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