しからずや道を説く君 など同じテマに属する一連の作があること昔は誰でも知つて居た。

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正月に知れる限りの唱歌せし信濃の童女秋も来よかし
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 久しく病床に伏す人の何物かを待つ気持がこれほどよくあらはれてゐる歌は多くあるまい。又 危しと命を云はず平らかに笑みて[#「笑みて」は底本では「笑ゐて」]我あり友尋ね来《こ》よ とも歌はれてゐる。余り屡※[#二の字点、1−2−22]病床を御尋ねしなかつた私などはこれらの歌を読むとほんとうにすまなかつたといふ気がする。

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こし方や我れおのづから額《ぬか》くだる謂はばこの恋巨人の姿
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 之は作者自身の場合を述べたものであるから、事実を知らないとよく分らない。晶子さんが與謝野夫人になるには実に容易ならぬ障礙を突破しなければならなかつた。寛先生の側にも面倒があり、作者は 親兄の勘当ものとなり果てしわろき叔母見に来たまひしかな といふ歌のやうに、父兄から勘当同様の身となり、剰へ新夫妻は恋仇の恐ろしい報復を受けて一時は文壇の地位をさへ危くしたほどであつた。それは即
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