へ移つてゆく、丁度その時私もまた遥か川下の家のことを思ひ出してゐた。同じ時の河鹿の歌に 風の音水の響も暁の河鹿に帰して夏寒きかな といふこれもすばらしい一首がある。河鹿に帰するとは何といふ旨い言廻しだらう。万法帰一から脱体したものであらうが唯恐れ入る外はない。
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高き家《や》に君とのぼれば春の国河遠白し朝の鐘鳴る
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これも亦日本語の構成する音楽。森々たる春の朝の感覚に鐘の声さへ加はつて気の遠くなるやうなリトムの波打つてゐる歌である。
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荷を負ひて旅|商人《あきびと》の朝立ちしわが隣室も埋むる嵐気
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これも小河内の夏の朝の光景である。川から吹き上げる嵐気が室にあふれる。この室ばかりではない。昨夜旅商人の宿つて今朝早く立つていつた小さい隣の室にさへあふれる。旅商人を点出して場合を特殊化した所にこの歌の面目は存し、それが深刻な印象を読者の心に刻むのである。この時の歌にはまた 渓間なる人|山女魚《やまめ》汲み行く方に天目山の靡く道かな などいふのもある。
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すぐれて恋
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