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わが踏みて昨日を思ふ足柄の仙石原の草の葉の露
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 [#全角アキは底本ではなし]仙石原は函根の中でも作者夫妻の最も親しんだ所でその度に無数の歌が詠まれてゐる。これは朝露を踏みながらそれらを囘顧する洵に玉のやうな歌である。又 黄の萱の満地に伏して雪飛びき奥足柄にありし古事 といふ歌もこの時作られてゐるが之は昔私も御一しよに蘆の湖へ行く途上に出会つた雪しぐれの一情景を囘顧したものである。

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春雨やわが落髪を巣に編みてそだちし雛の鶯の啼く
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 春雨が降つてゐる、鶯が鳴いてゐる。この鶯こそ私の若い落髪を集めてこしらへてやつた巣の中でやしなはれた雛の育つたもので、いはゞ私の鶯だ。といふのであるが、少女の空想のゑがき出したものであつて差支ない。

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吹く風に沙羅早く落つ久しくも我は冷たき世に住めるかな
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 沙羅の花は脆いと聞くが、今日仙石に咲くこの花も風が吹く度に目の前で落ちる。落ちて冷い地上に敷く心地はその儘私の心地に通ふ。思へば私としたことが長い
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