の葉青くひろがり朴の花甘き匂ひす鳥にならまし
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春になつて少しく山路に這入れば、朴の花が白く匂ひ、柏の葉の青く拡がる景色はどこでも見られる。唯鳥になりたいとは誰も思ひつかない所であつて、それがこの歌以前にこの歌のなかつた理由である。
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月夜よし海鳥の像の傍らのテラスに合はす杯の音
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巴里のことは今ではすつかり忘却の霧の中に這入つてしまつたのでどこに海鳥の像があつたか思ひ出せない。兎に角夏の夕の大きなカフェエのテラスで東洋の客がボツクの杯を合はしたのであらう。それを稍十年の後作者が思ひ出して作つた歌である。私は巴里を去つて既に二十五年になる。何にも思ひ出せないわけだ。
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衆人の喜ぶ時に悲しめど彼等歎けば我も歎かる
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一歩と云はず数歩と云はず世に先んずるものは皆さうであらう。人の憂ひに先立つて憂ふるが故である。しかし衆人の歎く時には我もまた歎くのである。つまり喜ぶといふことを知らずに死んでしまふのが、優れたものの持つて生れた悲しい運命なのである。
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