にしても熊本城にしても立派な美術品である。高く自ら標榜する光悦でも喜んで金を塗りさうな城の構へである。金はいふ迄もなく銀杏のもみぢである。
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旅寐する人のささやき雨の声潮の響き噴泉の音
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昔の別府、亀の井旅館の雨の夜のシンフオニイである。折から十一月の海が荒れて潮の響きさへ遠く聞こえたものらしい。旅寝する人のささやきは同行四人の自分らのささやきであらう。
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君と在る紅丸の甲板も須磨も明石も薄雪ぞ降る
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その帰途、紅丸が明石の門《と》にかかつた時雪が降り出した。よい時によい雪が降り出したものだと歎息したい位だ。もしこの時雪が降らなかつたらこの歌は出来なかつたであらう。為に日本文学は一つの大きな損失を来す所であつた。その位この歌の値打ちを私は高く評価するものである。晶子歌が何程勝れたものであらうと、神品といふべきものだけを拾つたらさう沢山ある筈はない。その第一はこの歌でないかと私は思つてゐる。再びナチかミリタリズムの世になつて晶子歌が全部亡ぼされる日が来たら、私はこの一首だけを石に彫して
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