。恩義に感じた凡骨は死ぬまで與謝野家に出入して変らなかつた。その凡骨は元来職人ではあるし少し変つた所もあり可哀らしい所もあつたので、夫人はこれを愛してよく冗談を云つたりからかつたりしたものである。旅行にもよくついて行つたがこの時も同行した。凡骨に一寸人並みでない所があるので、人並みに昼寝をするのがをかしいのである。

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涙落つ箱根の谷を上る靄またためらはず為すにまどはず
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 晶子さんは思ひ切つたことをよく実行した人である。しかしそれをする迄には幾度かためらひ又迷つたことであらう。今箱根の谷から靄の上つて来る様子を見ると少しも躊躇することなく為たいと思ふことを迷はず断行するものの様だ。しかしその前まだ谷に隠れてゐた間は私と同じ様に幾度かためらひ迷つたことであらう、それを思ふと涙がこぼれて来る。

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二三本芒靡けば目に見えぬ支那の芝居の沛公の馬
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 この歌なども今では立派なクラシツクとして国宝あつかひを受けて然るべきものであらう。解釈したり解剖したり批判したりする必要は更にない。唯秋風の吹く土堤
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