湯に柄杓を持ちて人通ひけり
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 関温泉はスキイ人のみが知る不便な山の上の昔風の温泉で私は行つたことがないが、柄杓を持つて田舎の湯治客の通ふ光景は想像することが出来る。その柄杓は湯を呑む為もあらうが、それよりも床に寝て湯を汲み上げて体にかける目的のものであらう。それほど旧式な山の湯の光景が第一句の雪深きに照応して分るのである。

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うちつけに是は東の春の海鳴ると覚ゆる大鼓かな
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 大鼓がぽんと鳴つた。さうしてぽんぽんと続くのを聞くといきなり春の海が寄せてでも来たやうな心持になつた。富士見町の家の直ぐ上に金春の舞台があつて鼓の音はそこから常にきこえて来た。或日突如として起つた大鼓の音がこんな風に聞こえたのであらうが、詩人が之を翻訳すると読者はゐながらにして反つて海潮音を聞くことにさへなる。

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三千の裹《くわ》頭の法師山を出づこれは王法興隆の為め
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 平家物語を詠じた歌の一つで、頭を裹《つつ》んだ叡山の山法師どもが日吉の神輿を担いで山を降る件である。鎮護国家の道場とある
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