た足を引ずつてあの埃ぽい路を歩いて帰つたことがあつた。帰つて見るともう日も暮れてしまひ、捕虫の目的であらう庭には篝がたかれてゐたが、私達が歩いて帰つたのを見て、なぜ迎へに出なかつたのかと主人が馬車を仕舞うとしてゐた馭者を叱かつた。それを馬が叱られた様に思つたのである。馬は叱られてその意味が分らずきよときよとして向うを見ると篝火が燃えさかつてゐて、それが小言と関係があるやうにも思へるが、この暑いのに何の為に火を焚くのかそれも分らずに当惑して居る形である。
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夏草を盗人のごと憎めどもその主人より丈高くなる
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その頃の星野温泉はまだ出来た許りで、将来庭となるべき所も未だ夏草の原であつた。主人は早く草でも刈つてきれいにしたいが何分にも人手がないのでとか何とか言ひわけをすると、それを聞いた寛先生はとんでもない。山荘の庭などといふものは草あるが故に貴いので、草を刈つてしまつては町家の庭も同じことになつてさつぱり値打ちがなくなつてしまふとか何とか、主人も主人だが寛先生の方も少し無理な負けず劣らずの夏草問答があつた。それを聞いて居て良人の肩を持つたの
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