夕月を銀の匙と迄は或は感じ得るかも知れない。しかしいちどクリイムを食べた時私の脣に触れたので、私の脣の感触も知つてゐる筈だとまで進みうるものは先づ無からう。それが詩人の詩人たる所因である。

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恋衣|裘《かはごろも》より重ければ素肌の上に一つのみ著る
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 恋衣といふ衣は裘などに比べればとても重い衣なので私は素肌の上にたつた一枚著て居るだけです。重くてとても二枚とは著られません。一枚で沢山です。

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いかにして児は生くべきぞ天地も頼もしからず思ふこの頃
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 大正五六年の頃の作で、子女が皆大きくなり、学費等も自然嵩んで来る、如何にしてこの大家族を養うべきかそれのみに日夜心を砕き若くして得た名声を利用して色紙、短冊、半切、屏風などを書きなぐるなど全力を尽くすといへど幾度か自信を失はれたことであらう。その時の溜息である。

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穂芒や琵琶の運河を我は行く前は粟田の裏山にして
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 大正十二年仲秋の月を石山に賞し疏水に舟を浮べて京に入られた時の作。普通疏水
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