けは涙が出なければと思ふ。

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夜の二時を昼の心地に往来する家の内かな子の病ゆゑ
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 子が重病に罹つた場合どの親でも経験したことを代つて云つて貰つた歌である。かうは誰にも云へなかつたのである。

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一言の別れに云ひも忘れしは冬の月夜の凄からぬこと
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 一言のは別れのあと、云ひもの前へ来る句で、一言云ひ忘れたのである。それは何かと云へば、冬の月夜は少しも凄いものでないといふことである。理由はいはずして明白だ。君と一しよだつたから。

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しどけなくうち乱れしも乱れぬも机は寂し君あらぬ時
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 之は富士見町の家の書斎の光景、離れの様に突き出した狭い書斎に夫妻は机を並べて仕事をしてゐた。それで先生が居ない折は、乱れた机と乱れない机と並んでゐる様子が一角を欠くが故にいかにも寂しく見えるのである。

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わが肩と建御名方の氏の子の島田と並ぶ夜の炬燵かな
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 山国の冬は何事も炬燵がその中心である。建御名方は諏訪明神
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