ある。
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そのかみの日の睦言を塗りこめし壁の如くに倚りて歎かる
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この壁を見るとその中には君と私との中に交はされたありし日の睦言が一杯塗りこめられてゐる様に思はれる。この壁に倚つて凡てが話されたからである。何といふ懐しい壁だらうと思つて倚りかかつて私は泣くのである。
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家にあり病院にある子と母の隔たる路に今日は雨降る
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作者は十一人の子女を育てられたが最も可愛がられたのは長男の光さんと末娘の藤子さんとで、特に藤子さんは一人で十人分位の慈愛に浴したやうだ。その藤子さんがまだ小さくて病気をし、近所の小児科病院に入院させた時の歌である。母子の情洵に濃やかで雨のやうに降りそそぐ感じがする。なほこの時の歌二首を上げる。 絵本ども病める枕を囲むとも母を見ぬ日は寂しからまし 人形は目開《あ》きてあれど病める子はたゆげに眠る白き病室
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仄かにも煙我より昇るとて君もの云ひに来給ひしかな
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恋を卒業した作者が今度は心を溌まして、恋の明るい一面を美しく歌
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