いのかも知れない。
[#ここから2字下げ]
霧積の霧の使と逢ふほどに峠は秋の夕暮となる
[#ここで字下げ終わり]
碓氷の坂を登つてゆくと霧の国霧積山から前触れのやうに霧がやつて来て明るかつた天地もいつしか秋の夕暮の景色になつてしまつた。
[#ここから2字下げ]
飽くをもて恋の終りと思ひしにこの寂しさも恋の続きぞ
[#ここで字下げ終わり]
私の恋は遂に達せられた、十分に堪能した、それ故そこで恋は終るものと考へてゐたのに、歓喜の後の悲哀らしい今の寂しさ、これも恋の続きで、少しも終つてはゐなかつたのであるといふわけだが、しかし之は言葉の綾であつて本来の目的は私は今寂しいのだと言ひ度いことにある。しかしそれだけでは歌にならないので前の文句を拈出したのである。
[#ここから2字下げ]
曙をかつて知らざる裏山の雑木林の夕月夜かな
[#ここで字下げ終わり]
軽井沢の奥の三笠山邑の光景で、昼なほ暗い程繁り合つた雑木林の心を曙を一度も知らないといつたので、それによつて影の多い夕月夜の印象がくつきりと浮んで来るのである。
[#ここから2字下げ]
相あるを天変諭し人さわぎ君は泣く泣く海渡
前へ
次へ
全349ページ中232ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平野 万里 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング