兼ねた蕎麦屋で手打ち蕎麦を食べさせたさうである、先生達はよくそこへ行かれた。一度歌会を開かうといふ話もあつたが当時交通が不便だつたので之は実現されなかつた。その大きな構への家の中を、直ぐこの境内に湧き出た許りの水量の頗る豊富な三鷹川――作者の命名ではないか――が流れてゐる光景である。再び島田屋の蕎麦の食べられる日がいつ廻つて来ることだらう。又同じ時の歌に 紫の幕の草を掛け渡す小家に廻る水車かな といふのもある。斯ういふあか抜けのした写生の歌は誰にもは出来ない。
[#ここから2字下げ]
母として女人の身をば裂ける血に清まらぬ世はあらじとぞ思ふ
[#ここで字下げ終わり]
女人の母としての一面をその出発点に於て規定するものであるが、これほどの事さへ晶子さん以前には考へる人がなかつたのではなからうか。
[#ここから2字下げ]
思へらく千戸の封は得ずもあれ梅見ん窗を一つ持たまし
[#ここで字下げ終わり]
作者は私などに比すればその志は極めて大きかつた。千戸の封といふ如き言葉の出て来るのがそれを証明してゐる。私も同じあこがれを持つてゐたので、この歌の気持が実によく分つた。しかし志の小さ
前へ
次へ
全349ページ中225ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平野 万里 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング