歌をよむのであるが、理由はよく説明が出来ない。或は作者の俤が裸で躍る様な感じが四五両句に感ぜられる、その為かも知れない。一首の意は恋愛三昧に日もこれ足りないのであらうが、ヰインの女のそれのやうに心易いものでなく、相当深刻なものであることは黒髪乱しが語つてゐる。

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雲遊ぶ空と小島のある海と二つに分けて見るべくもなし
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 秋の空が海に映り、海の青が空に映る瀬戸内の風光を、空には雲を遊ばせ、海には島を浮せ各その所を得しめた儘、之を併せて帰一させ、二にして一の実相として彷彿させる大手腕の歌だ。

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隣り住む南蛮寺の鐘の音に涙の落つる春の夕暮
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 暫くではあつたが千駄ヶ谷を出て神田の紅梅町に移られ、朝夕ニコライ堂の鐘を聞いて暮された事があつた。その時の歌。これは秋の夕暮ではいけないので、又夏や冬ではなほいけない、春でなければならないことは少しく歌を解するものなら分るであらう。唯私は涙を盛つた袋のやうな人であつたことを斯ういふ歌を読んで思ひ出す。涙が出ることを泣くといふならば一生泣き暮した人でもあつた
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