了つて既に久しい。どうです、少しこんな歌でもも一度はやらせて世直しがして見たいとは思ひませんか。

[#ここから2字下げ]
日を経ては香に焦げたる色となる初めは白き山梔《くちなし》の花
[#ここで字下げ終わり]

 之も病床吟であるから、瓶に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]した山梔の花を詠じたものである。もし露地の花をよんだものだとするとこれではいけない、何故なら少しも露地の景色があらはれてゐないからである。瓶の山梔を毎日眺めてゐると既に色づいて来て香にこげたやうな色になつたといふので如何にも床上の山梔の花のやつれてゆく様がその儘にあらはれてゐる。やつれながらも尚匂つてゐるのを香にこげたといふ風にいつたのだと解くものがあるかも知れないがさう迄考へなくてもよからう。

[#ここから2字下げ]
相見んと待つ間も早く今日の来て我のみ物は思ふ衰へ
[#ここで字下げ終わり]

 由来純抒情詩のカテゴリイに属する作にはむづかしくて意味の分りにくいのが少くないが、特にこの作者のにはそれが多い。中には女でなければ分らないのもあるし、分つたやうで分らないのもある。
前へ 次へ
全349ページ中19ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平野 万里 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング