若い時冬の最中寒い大連で生死の境に彷徨し同じ様な心細さを感じたことがあつた。

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紫に春の風吹く歌舞伎幕憂しと思ひぬ君が名の皺
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 昔の劇場風景。昔の芝居は朝から初まり幕合が長かつた。快い春風が明け放たれた廊下から吹き込んで引幕に波を打たせる、それは構はないが、大事の君の名の所に雛が寄つて読めなくなるのが悲しい。大きくなつた半玉などの心であらうか。

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那須野原吹雪ぞ渡る我が上をそれより寒き運命渡る
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 この時は大分の重態で御本人も寛先生も死を覚悟された模様であつた。この歌にもそれがよく現はれてゐる。那須野原吹雪ぞ渡るといふ調べの荘厳さは死そのものの荘厳さにも比べられるが、一転してそれより寒き運命渡ると死に向ふ心細さを印し以て人間の歌たらしめてゐるのであるが、蓋し逸品と称すべきものの一つであらう。

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人捨つる我と思はずこの人に今重き罪申し行なふ
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 人捨つるは人を捨てるの意であらう。人を捨てることの出来るやうな残酷な強情な私とは思ひません、で
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