がこんなによく現はれてゐる歌は少い。ただ静かに打ち誦して老女詩人の旅情に触れ、少しでも私達の魂を洗はせて貰はう。同じ時の作には 遠く来ぬ越《こし》の海府の磯尽きて鼠《ねず》が関見え海水曇る などがある。
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自らの腕によりて再生を得たりし人と疑はで居ん
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もし私といふものがあつて此の人を愛してやらなかつたら、此の人はとうに死んで居たらう、少くとも精神的には。して見れば私は此の人を再生させた大恩人で誰もかなはない貴重な存在でなければならない。私はそれを疑はない、何も心配はしないといふのであるが、実は心許ない感じがあつての事であらう。
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北海の唯ならぬかな漲るといふこと信濃川ばかりかは
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越後の寺泊で五月雨に降りこめられた時の歌。海さへ為にふくれ上つて信濃川の漲るやうな心持が北海の上にも見られた。それが作者には唯ならぬ様子として映つたのである。唯ならぬとは女の孕んだ時などに使はれる言葉で、さういふ気持がこの時にも動いてゐる。
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君乗せし黄の大馬とわが驢馬と並べて春の
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