二はこんな夢をみました、算数の試験でした、雄二は教室の机について、紙と鉛筆をもっています、試験の問題が不思議にすらすらとけてゆきます、雄二は頭のところが自分の頭ではなくて、兄の頭になっているのが、ちゃんと分ります、でもそれは他人にはまるでわからないのです、雄二はいい気になって早速、全部の問題を解いてしまいます
「雄二君、素敵だなあ、この問題が全部できた人はこのクラスには君しかいなかったよ」
 先生からかえしてもらった答案をもって、雄二は家にもどります、雄二はその成績をお母さんに見てもらおうと思います、でも、もし兄がほんとのことを知っていたら「何だい、僕の頭借りたくせに」と兄はおこるかもしれません、そこで雄二は成績をそっとかくすようにして、部屋の入口から中をのぞいてみました
 すると驚いたことに、兄は寝床のなかで、ぐうぐう眠っていました、が、もっと驚いたのは、兄の首から上は雄二の頭とそっくりなのです、それを見ると雄二は急に腹が立ちました「いけない、いけない、僕の頭とっちゃいやだい」雄二は猛烈な勢いで兄にとびついて行きました、そのひょうしに雄二は眼がさめました、雄二の頭は隣に寝ている兄の頭
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