ならずあるのです。
 東京は盆で電車はもの凄いばかりです。それでは暑さの折から御大切に。
   兄上様[#地から3字上げ]民喜



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●昭和二十一年十月十三日 大森区馬込末田方より 広島県佐伯郡平良村 原信嗣宛
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 毎日よく雨が降つてじめじめした天気がつづいて居ます。廿日市の秋はどうですか。もう松茸も出る頃でせう。松茸どころかこちらは一ヶ月以上も米の味を忘れて居ます。最低生活をしながら金は矢鱈にかかり困つたものです。今年は豊作で増配の見込などと云はれてゐますが、ほんとか、どうか疑はしくなる程です。美樹君ももう来るかしらと思つて居ましたがなかなか出て来ませんね。
 先日は小切手有難う御座いました。第一封鎖に受つけてくれました。特殊預金など今後どうなるのでせうか、財産税などの手続で御存知のことがあったらその都度御教へ下さいませんか。扨て話は別ですがヘンリー・クボ君は大阪へ転勤になりました。そのヘンリー君の紹介で増岡登三郎といふ伯父を知ることが出来ました。先日牛込の家へはじめて訪ねて行きました。七十二歳といふことですが、なかなか元気さうな人です。古いことをいろいろ聞かされました。そこの家は戦禍を免れ息子は九州の方に居て今は夫妻きりの暮しです。で、もし御上京の折など宿にお困りでしたら、米を御持参になれば宿位は貸してあげるから、さう伝へておいてくれとのことでした。
 牛込弁天町 一三五    増岡登三郎
 もつともまだ東京見物は陰惨の域を出ないでせう。有楽町駅のコンクリの上にも上野公園の石段の上にも赤ん坊を抱へた女がぽかんとした顔でねそべつて居ります。銀座は綺麗になつたやうですが全体としてまだまだ焼跡のままのところが多いやうです。
 それではみなさんによろしく。
[#地から3字上げ]十月十三日

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史朗君へ

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 ※[#丸1、1−13−1]大きいやうで小さく小さいやうで大きいものは
 ※[#丸2、1−13−2]一ぺんおじぎをすれば四五へんおじぎをしてもらへることがあるがなに(答はうらにある)
 答 ※[#丸1、1−13−1]原子爆弾 ※[#丸2、1−13−2]駅で他人におじぎをしてタバコの火を貸りてタバコを吸つて居れば、すぐ誰かが、また火をおかし下さいと云つておじぎするよ。



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●昭和二十一年十一月二十七日 大森区馬込末田方より 広島県佐伯郡平良村 原美樹宛
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 美樹君 慶応義塾は財政難で倒れさうになつてゐるよ。塾長改選問題なども紛糾してゐるし、早く君が出て来て何とかしてやつてくれ。今度の土曜に十一番教室で三田文学紅茶会があるが出て来ないか。この頃はときどき米が食へるやうになつた。
[#地から3字上げ]十一月二十七日



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●昭和二十一年十二月十六日 大森区馬込末田方より 広島市幟町 原信嗣宛
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 永らく御無沙汰してゐましたが御変りございませんか。既に幟町の方へ転宅なさつたのではないかと思つてそちらへこの手紙差出します。先日美樹君が上京し御近況も承はりました。特殊預金のこと何とも御気の毒なことです。財産税を控へてインフレは昂進するばかりで困つたものです。こちらでは又、食糧の遅配がはじまりどうなることやら暗澹たるものです。上野駅のコンクリートの上に寝起する宿なしの群はニユース映画でも出て来ますが実際を見て来た人の話をきいては一層驚かされます。新聞紙をコンクリートの上に敷いて寝るのでそのため夜遅くなると夕刊が五十銭に値上になるさうです。
 美樹君も折角上京したのに宿が無くて帰京し気の毒なことです。
 扨て私はこの月の二十一日に学校が終りますから一度そちらへ行つてみたいと思つてゐます。二十五日か六日に出発、途中倉敷と本郷へ立寄りますから広島へ着くのは卅日頃となるでせう。何分その折にはよろしく御願ひ致します。
 寒さの折柄、御大切に。皆さんによろしく御伝へ下さい。
   兄上様[#地から3字上げ]民喜



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●昭和二十二年一月八日 大森区馬込末田方より 広島市幟町 原信嗣宛
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 先日はいろいろ御世話になりました。慌しい旅でしたが印象深いものでした。
 帰りの汽車も大混乱でした。
 美樹君に見送り有難う。



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●昭和二十二年二月七日 大森区馬込末田方より 広島市幟町 原すみ江宛
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 お手紙有難うございました。
 寒はあけたのに、まだまだ寒いことですが、皆さんは御
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