cな動物を見つけたという噂は、だん/\、ひろがってゆきました。
 その動物の大きさは、スプラクナク(この国の綺麗な動物で、長さはおよそ六フィートほど)ぐらいで、形はまるで人間と同じ形だし、動作も人間とそっくり、何だか可愛い言葉をしゃべるし、それにこの国の言葉も今は少しおぼえたようだし、二本足でまっすぐ立って歩くし、おとなしくて、すなおで、呼べば来るし、言いつけたことは何でもするし、とても、きゃしゃな手足を持っていて、顔色は三つになる貴族の娘より、もっと綺麗だ、などと、私の評判は、だん/\、ひろまっていました。
 ところで、主人の親友の農夫が、このことを聞くと、ほんとかどうか、見にやって来ました。私はさっそくつれ出されて、テーブルの上に乗せられました。私は言いつけどおりに、歩いて見せたり、短剣を抜いたり、おさめたりして見せました。それから、お客に向って、うや/\しく、おじぎをして、
「よくいらっしゃいました。御機嫌はいかゞですか。」
 と、可愛い乳母さんから教えられたとおりの言葉で言ってやりました。
 そのお客は年寄で目がよく見えないので、もっとよく見ようと眼鏡をかけました。それを見ると
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