オた。ちょうど、イギリスの女が、ひきがえる[#「ひきがえる」に傍点]やくも[#「くも」に傍点]を見たときのように、「きゃあ……」と叫んで、細君は跳びのきました。しかし、しばらくそばで見ているうちに、主人の手まねで私がいろんなことをするのを見て、細君はすっかり感心してしまいました。そして今度は、だん/\と私にやさしくしてくれるようになりました。
正午頃になると、一人の召使が、食事を持って来ました。それはいかにも、お百姓の食事らしく、肉をたっぶり盛った皿が、たゞ一つだけ出されたのでした。しかし、それは直径が二十四フィートもある、大きなお皿でした。
食堂には主人と細君と、子供が三人、それに、年寄の祖母がやって来ました。みんながテーブルに着くと、主人は私をテーブルの上にあげて、少し彼から離れたところに置きました。そのテーブルは高さ三十フィートもあるのですから、私は怖くてたまらないのです。落っこちないように、できるだけ、真中の方へよって行きました。
細君は肉を少し、小さく刻んで、それから、パンをこな/″\に砕くと、それを私の前に置いてくれました。そこで、私は細君に向って、ていねいに、おじぎ
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