ノ分類できそうです。だが、それにしても、一番、人をハッとさすのは、ヤーフが光る石(黄金)を熱狂的に好むというところでしょう。僕は戦時中、この馬の国の話を読んでいて、この一節につきあたり、ひどく陰惨な気持にされたものです。陰欝といえば、この物語を書いた作者が発狂して、死んで行ったということも、ゴーゴリの場合よりも、もっと凄惨な感じがします。
 また僕は五年前のことをおもい出しました。原爆あとの不思議な眺めのなかに――それは東練兵場でしたが――一匹の馬がいたのです。その馬は負傷もしていないのに、ひどく愁然と哲人のごとく首をうなだれていました。


   一匹の馬

 五年前のことである。
 私は八月六日と七日の二日、土の上に横たわり空をながめながら寝た。六日は河の堤のクボ地で、七日は東照宮の石垣の横で、――はじめの晩は、とにかく疲れないようにとおもって絶対安静の気持でいた。夜あけになると冷え冷えした空が明るくなってくるのに、かすかなのぞみがあるような気もした。しかし二日目の晩は土の上にじかに横たわっているとさすがにもう足腰が痛くてやりきれなかった。いつまでこのような状態がつづくのかわからな
前へ 次へ
全249ページ中246ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング