齔lは鷲が三羽北を指して飛んでいるのを見た、が大きさは別に普通の鷲と変ったところはなかったと答えます。もっとも非常に高く飛んでいたので小さく見えたのだろうとガリヴァは考えるのですが、これは少し念が入りすぎているようです。そして、こんな手法は馬の国からの帰航では更らに陰欝の度を加えてくりかえされています。ここでは人間社会から逃げようと試みるガリヴァの悲痛な姿がまざまざと目に見えるほど真に迫って訴えて来ますが、奇妙なのは船長とガリヴァとの問答です。はじめ彼の話を疑っていた船長が、そういえばニューホランドの南の島に上陸して、ヤーフそっくりの五六匹の生物を一匹の馬が追いたててゆくのを見たという人の話をおもいだした、という一節があります。実に短かい一節ながら、ここを読まされると、何かぞっと厭やなものがひびいて来ます。何のために、こんな念の入ったフィクションをつくらねばならなかったのかと、僕には、何だか痛ましい気持さえしてくるのです。
 身振りで他国の言葉を覚えてゆくとか、物の大小の対比とか、そういう発想法はガリヴァ全篇のなかで繰返されています。この複雑な旅行記も、結局は五つか六つの回転する発想法
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