キ。夢ではないかしらと、目がさめるように、脇腹をつねってみました。が、夢でもないのです。それでは、これはみんな魔法使の仕業《しわざ》にちがいない、と私は決めました。
 ちょうど、そのとき、青毛が戸口から顔を出して、私に入れと合図しました。中に入ってみて、私は驚きました。上品な牝馬が一匹、それに子馬が一匹、小ざっぱりした筵《むしろ》の上にきちんと坐っているのです。
 牝馬は延から立ち上ると、私のそばへ来て、私の手や顔をジロ/\眺めました。それから、いかにも私を軽蔑するような顔つきで、
「ヤーフ」
 とつぶやきました。そして、青毛の方をかえりみては、お互に何回となく、この「ヤーフ」という言葉を繰り返しているのです。
 青毛は私の方へ首を向けて、「フウン、フウン」としきりに繰り返しました。これは、ついて来い、という合図なのでした。そこで私は彼について、中庭のところへ出ました。家から少し離れたところに、また一棟、建物がありました。そこへ入ってみて、私はあッと思いました。
 私が上陸してすぐ出くわした、あのいやったらしい動物がいたのです。その三匹の動物がいま、木の根っこや、何か生肉をしきりに食っ
前へ 次へ
全249ページ中204ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
原 民喜 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング