「それから、もう一つお願いがございます。どうか、あの十字架踏みの儀式だけは、私にはかんべんしていたゞきたいのです。私は貿易のため日本へ来たのではなく、たゞ、たまたま災難からこの国へたどりついたのですから。」
と、お願いしました。
ところが、これを陛下に通訳が申し上げると、陛下はちょっと驚いた様子でした。それから、こう言われました。
「オランダ人で踏絵をしたがらないのは、その方がはじめてなのだ。してみると、その方はほんとうにオランダ人かどうか怪しくなってくる。これはどうもほんとうのクリスト信者ではないかと思えるのだがなあ。」
しかし、とにかく、私の願いは許されることになりました。役人たちは、私が踏絵をしなくても、黙って知らない顔をしているように命令されました。
ちょうどそのとき、ナンガサクまで行く一隊があったので、その指揮官に、私を無事にナンガサクまでつれて行くよう、命令されました。
一七〇九年六月九日、長い旅のあげく、ようやくナンガサクに着きました。私はすぐそこで、『アンポニア号』という船の、オランダ人の水夫たちと知り合いになりました。前に私はオランダに長らくいたことがある
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