らせ、私の乗りまわす場所もこさえてあげる、と言われました。
そこで、器用な指物師が、私の指図にしたがって、十日かゝって、一艘の遊覧ボートを作り上げました。船具も全部そろっていて、ヨーロッパ人なら、八人は乗れそうなボートでした。それが出来上ると、王妃は非常に喜び、そのボートを前掛に入れて、国王のところへかけつけました。国王は、まず試しに、私をそれに乗せて、水桶に水を一ぱい張って浮かせてみよ、と命じられました。しかし、そこの水桶では狭くて、うまく漕げませんでした。
ところが、王妃は、ちゃんと前から、別の水槽を考えていられたのです。指物師に命じて、長さ三百フィート、幅五十フィート、深さ八フィートの、木の箱を作らせ、水の漏らないように、うまく目張りして、宮殿の部屋の壁際に置いてありました。水は、二人の召使が、半時間もかゝればすぐ一ぱいにすることができます。そして、その箱の底には栓があって、水が古くなると抜けるようになっていました。
私はその箱の中を漕ぎまわって、自分の気晴しをやり、王妃や女官たちを面白がらせました。彼女たちは、私の船員姿を大へん喜びます。それにとき/″\、帆を上げると、
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