、妃はまず、私の国や旅行について、いろ/\質問されました。私はできるだけ簡単に、はっきりとお答えしました。それから王妃は、宮廷に来て住む気はないか、と聞かれました。そこで、私はテーブルに頭をすりつけて、
「只今は主人の奴隷でございますが、もし、お許しが出るのでしたら、私は陛下に一身を捧げてお仕えしたいと存じます。」
と答えました。
すると、王妃は主人に向って、これをいゝ値段で売ってはくれないか、とお尋ねになりました。主人の方では、私がとてもあと一月とは生きていまいと思っていたところですから、
「それでは、お譲りいたしますが、金貨一千枚頂戴いたしたいと存じます。」
と言いました。
王妃はその場で、すぐお金を渡されました。そのとき、私は王妃に次のように、お願いしました。
「これから陛下にお仕えするにつきまして、お願いしたいことがございます。それは、今日まで私のことをよく気をつけて面倒をみてくれていたグラムダルクリッチのことです。あの人もひとつ宮廷でお召し使いになり、これからもずっと私の乳母と教師にさせていただけないでしょうか。」
王妃はこの私の願いをすぐ許されました。が、父親の方
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