烽フは、人間に触られたことがなかったので、一時間ばかり、私は気絶してしまいました。
[#改丁]
著者から読者へに代えて
あとがき
ガリバーは十六年と七ヵ月の間、不思議な国々を旅行して来ました。私たちも、彼のあとについて、もう一度、その珍しい国々を廻ってみましょう。
まず一番はじめに、リリパットの国へ来てみると、どうでしょう。うっかり歩けば、足の下に踏みつぶしてしまいそうな小人がうじょうじょしているではありませんか。小人なんか何でもないと侮《あなど》ると大間違いです。ガリバーはあべこべに小人の王様の家来にされてしまいます。それから、ハンカチの上で騎兵を走らせたり、軍隊を股《また》の下に行進させたりします。こんな話なら、もう誰でも一度は絵本で見たり、人から聞かされて知っているはずです。私も子供のときリリパットの国の話を聞いて、縁側で蟻《あり》の行列を眺めていたら、自分がガリバーになったような気がしたものです。しかし、小人の国にも戦争があったり、政争があったりして、ガリバーはとうとうこの国を逃げ出してしまいます。
それから、その次にブロブディンナグ国へ来てみると、ガリバーはまず胆《きも》をつぶします。今度はガリバーの方が小人になっているのです。いくら、ガリバーが強そうな振りをしても、自分の国の自慢をしてみても、この国の人から見れば、まるで虫けらのようなものです。だから、ガリバーは箱に入れられて、カナリヤのように可愛がられています。すると、その箱を鷲がつかんで海へ持って行きます。こうして、ガリバーは大人国ともお別れになります。
今度はガリバーは飛島へやって来ます。どうもそこには奇妙な人間ばかり住んでいるので、ガリバーはうんざりしてしまいます。それから、バルニバービ国の学士院を見物したり、幽霊の国へ行ったり、死なない人間と会ってみたりします。それからガリバーははるばる日本へまでやって来ます。東京はまだ江戸といわれていた頃のことで、長崎では踏絵があったりします。
最後にガリバーは馬の国へやって来ます。そこには人間そっくりのヤーフといういやらしい家畜がいるので、まずガリバーはそれを見てぞっとします。それからフウイヌムたちに会い、そこの言葉をおぼえ、そこの国に馴れてくるにしたがって、ガリバーはこの穏やかな理性の国がすっかり気に入ってしまいます。そ
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