で、一度田舎へ取りに行こうかしらと、小山に相談すると、小山は田舎へ行つてはいけないと云つて、何処からか、わたしに似合う洋服や外套を持つて来てくれた。わたしは、勝手に街へ出て、美容院でパアマネントをかけた。小山はわたしに、お前ははいからな顔をしているから、まるで西洋人のようだと云つた。ダンサーになつたら流行るだろうと云つた。わたしはダンサーになつてみたいと思つた。新聞を買つて来ては、そんな広告を探してみて、小山に相談をすると、小山はきつと反対するだろうと思つたから、わたしは勝手に志願して行つてみた。そこは日本人相手のホールで、素人は二週間ほどけいこをして貰うことになつている。わたしは昼間そこへ通つた。そこで、楽士をしていると云う栗山に逢つた。栗山はまだ若くて、復員して来たばかりで、気持ちのきれいな男だつた。栗山と話していると何となくわたしは気持ちがよかつた。栗山は外食券でごはんを食べているので、たまには家庭の飯がたべたいと云うので、或日、わたしは浦和のアパートに栗山を連れてかえつた。小山が闇の米を買つてくれていたので、わたしはそれを焚いて、鰯を焼いたり、肉のみそ煮をしたりして栗山に食べさ
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