梟の大旅行
林芙美子

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 むかしあるところに、梟が住んでいました。ふかいふかい森のなかで、晝も、ほの暗いところなのです。あんまり暗い森のなかなので陽氣なお天氣の好きな、小鳥や、りすも、みんな、森のそとがわに出て住んでいました。
 梟はたった一人ぼっちで淋しいので、晝間も歌をうたって暮していました。
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ぼろ着て奉公!
ぼろ着て奉公!
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 梟が、ぱたぱたと羽ばたきをして、こんなうたを歌うので、森のなかの楡の木は、ほんとに淋しくなって退屈で仕方がありませんでした。
 ああ、また梟が何か云っている。どうして、あいつはあんなにいんきでじめじめした奴なんだろう。少しは、陽氣な歌でもうたってくれるといいんだのになアと、ぶつくさ云うのです。本當に森のなかはじめついていて、地びたの苔は、水氣でぐっしょり濡
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