頬に自分の額を押しつけてみたが、不意い、何とも名状しがたい熱い涙が湧くやうに、赤ん坊の着物に沁みていつた。
 おばあさんは何かいひたさうに唇をもぐもぐさして、疊の上に落ちてゐる赤いセルロイドのがらがらをひらつて、それをにぶく振りながら子供のやうに呆んやり眺めてゐる。



底本:「旅館のバイブル」大阪新聞社東京支社
   1947(昭和22)年2月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:林 幸雄
校正:花田泰治郎
2005年8月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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