、父は、昨夜×××と間違えられながらやっと来たら入れ違いだった事や、帰えれないので、学生さんと話しあかした事なぞ物語った。

 私はお父さんに、二升の米と、半分になった朝日と、うどんの袋を持たせると、汗ばんでしっとりしている拾円札を壱枚出して父にわたした。
「もらってえゝかの?……。」
 お父さんは子供のようにわくわくしている。
「お前も一しょに帰えらんかい。」
「番地さえ聞いておけば大丈夫よ、二三日内に又行くから……。」

 道を、叫んで行く人の声を聞いていると、私もお父さんも切なかった。
「産婆さんはお出になりませんかッ……どなたか産婆さん御存知ではありませんかッ!」

 九月×日
 街角の電信柱に、始めて新聞が張り出された。
 久し振りに、なつかしいたよりを聞くように、私も多勢の頭の後から、新聞をのぞいた。

 ――灘の酒造家よりの、お取引先きに限り、大阪まで無料にてお乗せいたします。定員五拾名。

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何と素晴らしい文字よ。
あゝ私の胸は嬉しさではち切れそうだった。
私の胸は空想でふくらんだ、酒屋でなくったってかまうものか。
旅へ出よう。
美しい旅の古里へ出
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