私は堤の上の水道のそばに、米を投げるようにおろすと、深々と煙草を吸った。少女らしい涙がにじんで来る。
 遠くつゞいた堤のうまごやし[#「うまごやし」に傍点]の花は、兵隊のように、皆地びたにしゃがんでいる。
 星がチカチカ光りだした。野宿をするべく心をきめた私は、なるべく人の多いところへ。堤を降りると、とっつきの歪んだ床屋の前に、ポプラで囲まれた広場があった。
 そして、二三の小家族が群れていた。
「本郷から、大変でしたね……。」
 人のいゝ床屋のお上さんは店から、アンペラを持って来て、私の為に寝床をつくってくれた。
 高いポプラがゆっさゆっさ[#「ゆっさゆっさ」に傍点]風にそよぎ出した。
「これで雨にでも降られたら、散々ですよ。」
 夜警に出かける、年とった御亭主が、鉢巻きをしながら、空を見て、つぶやいた。

 九月×日
 朝。
 久し振りに、古ぼけた床屋さんの鏡を見る。
 まるで山出しの女中さんだ、私は苦笑しながら、髪をかきあげた。油っ気のない髪が、バラバラ額にかゝって来る。
 床屋さんに、お米二升お礼に置く。
「そんな事してはいけませんよ。」
 お上さんは一丁ばかりもおっかけて、
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