、しばらくほえたてていたペットは、急に後脚が痛くなって、がくんと雪の上にへたばってしまった。ペットは熱い牛乳をのみたいと思った。
ことしの冬は、どうして、こんなに人がいないのだろう、たまに、人のいる別莊をさがしてみても、そこの人達は、ペットを棒で追ったりしてよせつけてはくれない。
ペットは脚を引きずりながら、モオリスさんの別莊へもどって來て、また、床下から、いつものところへもぐっていった。
部屋の中はまっくらで、時々、こわれたガラス戸をゆすって、吹雪がはげしいいきおいで、部屋の中へ吹きこんでいる。しばらくすると、ほのかな雪あかりで、暗い部屋のなかがおぼろ氣にみえて來る。
ペットは二階へ上ってみた。わらのはみ出た廣いベッドが窓ぎわにある。ペットは脚を引きずりながら、ベッドの下にもぐりこんでみた。
ペットは時々頭を窓邊に向けて、はげしい吹雪にほえたててみたけれども、窓を叩く雪まじりの風は少しも靜まらない。
ペットは泣きたくなるほどさびしかった。
天井から、くもの巣だらけのカーテンのひもがぶらさがっている。ペットはしばらくそのひもをがりがりとかんでいた。
ひもをかんでいるうち
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