らひました。
こンな人を見ると、やつぱり都会は田舎の人にはいゝ土地ではないと思ひます。土をみつめて、朝から晩まで平凡に暮してゐるお百姓を見ると、私は心から頭がさがります。
秋の展覧会も間近ですが、勇兄さんのお仕事はどうですか。今年はモデルをおつかひになりまして? 此間勇兄さんが、絵の具代が残つたからつて、私にお小遣ひ[#「お小遣ひ」は底本では「お小遺ひ」]を少し送つて下さいました。お礼言つておいて下さい。私は何でも言へる貴女を持つてゐることを、とてもうれしく思ひます。体はやつぱり安静にしてゐた方がいゝやうです。踊つて帰つて来ましたら、少し頭がグラグラしました。
夕方、桃の葉を入れた野風呂にはひり、早くから床へもぐりこみました。
離れの先生は夜中詩吟ばかりしてゐます。辛いのかもしれません。そのうち――。
[#地から2字上げ]かづ子
百合江さま みもとへ
底本:「林芙美子全集 第十五巻」文泉堂出版
1977(昭和52)年4月20日発行
初出:「令女界」
1931(昭和6年)10月号
※疑問点の確認にあたっては、「青春」実業之日本社、1940(昭和15)年4月3日9版発行を参照しました。
入力:林 幸雄
校正:花田泰治郎
2005年6月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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