しきりにすすめましたので、鶴の親子は涙ぐんでしまいました。たったこの間までは、みんなたべものをかくしあって、自分たちのことばかり考えていた鶴たちは、よるとさわるとたべもののけんかで、なかではおたがいにだましたり、きずつけあったりして、血なまぐさいことばかりで、鶴たちは、食べものの事といっしょに精神的な心配で、今日はたのしいという日は一日だってありませんでした。
みんな、がやがやと群をなして、弱いものをおびやかしては、少しのたべものもとりあげて強いものがいばっているのです。
鶴の子供たちも、自然に気持がすさんで、おとなの悪いところばかりまねるようになって、きたない言葉づかいで、けんかばかりしていたのです。あんまりききんがつづいたので、みんな村をすてて行ってしまいましたけれど、いまはかえって、以前より平和になり、七羽の鶴は、どんなことがあっても、のぞみをすてないで、ここで元気に働いて暮しましょうと話しあいました。
鶴のお嫁さんの案内で、魚のたくさんあるところをみつけましたので、七羽の鶴はしっそな気持で、いつもたのしい食事をすることが出来ました。
ある夜、あんまり美しいお月夜で、金色
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