つて來た。
「ねえ、多摩川の螢をみせてあげませうか?」
「とつて來たのかい?」
「うん」
 ツヤは子供のやうな亂暴な返事をして、袂《たもと》から紙へつつんだ澤山の螢を出してみせた。赤い尻尾をした螢が、すぐピンと羽根を擴げて暗い方へさつと四五匹飛んで行つた。



底本:「女優記」新潮社
   1940(昭和15)年8月13日発行
   1940(昭和15)年9月8日40版
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:林 幸雄
校正:花田泰治郎
2005年8月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全20ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 芙美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング